山内の3plyウールクロス・サイドシームレスワンタックパンツです。
ですのでどちらも表、どちらも裏
あれでよくなくないセーター
ワニでもなくウマでもなくクマでもなくヒツジでもなく
僕は「服」を売りたい。
服を得てスタイルを作る。
物によっては反転する事もあるけれど、デザイナーズに関してはまずは物を見てもらいたい。
ブランドは苗字、アイテムは名前にあるから、入りがブランドになってしまうのは仕方のない事だけれど、というか当然だけれど、
ブランドは承認要求の為の飾りではないし、僕もタグを売りたいわけではない。
SNSの肥大化と共に、今日のファッションは流れている。
「物」を置き去りに、発信源・発信方法に委ねられる流れ。
自分の様な小規模の店がそんな事を言うと、ただの妬みにしかならないし綺麗事にしかならないけど、その流れにいて服を売っているようで何を売っているのかがわからなくなりそうなのが怖くて独立しました。
向かうベクトルは沢山あるからそれが正義ではない事は承知の上。
ましてやそのおかげで充分すぎるお給料も頂いていたわけだし、それがどうのこうの言うのは失礼極まりないし微塵にも思っていない。
それでもやっぱり僕は服屋でありたい。
僕は山内さんが作る服に、ダンディズムを感じています。
中野香織さんの著書『ダンディの系譜』では、ダンディーとは圧倒的な個・集団からの独立・反抗心を持ち、己の美学に則り装い振る舞う男性像であり、ダンディズムとはその精神という解釈がされています。
ダンディズムは多数派に反発した価値観であるというイズムです。
自己愛から漲る自信と余裕は他人を引きつける魅力があり、その鋭いムードは自ら刺すにあらず、まるで仕掛けた罠に獲物が訪れるのを待つ様に座す。
追う者ではなく追われる者であれ。
自ら他人の評価を求めに赴くことのない究極の自己満足。
僕はそのイズムと、山内さんの作る服またブランドの在り方に重なる部分がとても多いと感じました。
流れから外れ、プロモーションを用いず、「服」そのものの輝きを売りにしている。
主流からの独立、独自の美学。
今3CMAに並ぶ山内の作品たちは、キャッチに紹介される居酒屋ではなく、路地裏の看板もない様なバー。
見てくれと騒ぎ立てず、深く腰掛け足を組んで待っている。
うん、とってもダンディ。
今日ご紹介させて頂くのは、性は山内・名は3plyウールクロス・サイドシームレスワンタックパンツ。
名前の通りサイドシームをなくした仕様で、ズドンと迫力のあるワイドシルエットのパンツです。
本来のパンツは前後2つのパーツを内側と外側の2箇所で縫い合わせて筒を形成するパターンニングですが、このパンツはアウトシームをなくし、インシームからぐるりと一周して縫い合わせた1 つのパーツで設計されています。
つまり、外側に接ぎ目がなく内側のみで接合していると言う事です。
アウトシームを無くすことの恩恵は2つ。
縫い合わせ箇所が両端ではない事で実現する、平面的ではなく立体的なフォルム。
通常ドレープに干渉する縫製部分がない為、ドレープが崩れない美しいサイドアングル。
この2つの恩恵を授かったところで、通常のパンツが劣っている様には感じません。
しかしこの必要のない満足こそがダンディの拘り・嗜みなのです。
フロントアングルは大ぶりな持ち出しと、クリースに連なる深いタックが特徴的。
持ち出しは装飾のないソリッドなデザインに、少しのアクセントを与えてくれています。
深いタックはワイドシルエットのスラックスの、スラックスの語源である「ゆるい」部分を引き締めたビジュアルに見せてくれる効果があります。
ピシッと縦に落ちるクリースからも、凛とした緊張感。
生地は3本強撚りで織り上げた薄手のウールトロピカル。
夏場に適したサマーウールです。
サマーウールらしいとろみはありますが、実際に触れてみるとジャリジャリとしていて、男服らしい力強さと清涼感が感じられる質感です。
山内
3plyウールクロス・サイドシームレスワンタックパンツ
Ash Gray
表地 毛 100%*別布 綿 100%
¥69,300-
パターンニング・生地・縫製、全てがピタッとはまって出来上がったこのパンツのバランス。
そのピタッは偶然にはまったものではなく、細かい調整を施して組み立てはめ込んだ物です。
正にジグソーパズルの様に...といった使いまわされた常套句がありますが、このパンツは正に...でした。
山内さんがつくるパズルは、ピースの数がとても多い、そしてその一つ一つが複雑な形をしている。
その難しさは万人に好まれはしないけれど、それが山内さんの物作りの美学でありブランドの姿勢です。
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